樹木医が扱う樹木の症状は様々です。
人の病気で内科や外科など分かれているのと同じように、一言で病気といっても、色々な原因があります。
そもそも、樹木の病気とは何でしょうか。
樹木が、寄生者や樹木を囲む環境要因に反応して、本来の形態や生理機能が異常になるのが病気であり、病気にかかることによる被害が病害ですが、一般的には病気=病害して使われています。
しかし、樹木が明らかに異常になっていても、病害とはみなされないことがあります。
例)園芸樹木の斑入り、竹に斑紋が現れる斑竹など
樹木の生理的には状態異常とみなされますが、斑の面白さ・美しさから、園芸品種の付加価値として利用されています。
逆に、正常な生理現象でも病害とされることもあります。
例)竹の開花病
竹は開花すると一斉に枯れてしまいます。竹の生理現象としては問題ないのですが、鑑賞目的としての竹の価値はなくなってしまうので、病害とされます。
また、明らかな代謝の異常が起こっていても外観的な変化が現れていない場合は診断が難しくなります。
寒さ、暑さ、風などの気象要因が原因となる、病気の範疇に入る害もあるが、それらの気象要因による被害の主体は傷害であり、病気とは区別されます。
樹木を含む植物の病気を起こす原因には、以下のふたつがあります。
【主因】発病に最も大きな役割を果たしている一時的原因
(伝染性のある生物的病原か、伝染性のない非生物的病原)など
【誘因】発病を助長する環境要因など
(誘因の例)
寒害、凍霜害
強風
多雪
高温・少雨による乾燥
高い空気湿度または多雨
陰湿な環境
土壌の過湿、土壌の固結
土壌中のカリウム不足
土壌の肥沃
未分解有機物の過多
焚き火
土壌の酸性化
大気汚染
菌密度の増加
昆虫による食害
種類や性質により、樹木それぞれにも好む環境と好まない環境とがあります。
新しく樹木を植えるときは、彼らそれぞれにできるだけ合った環境を整えてあげるか、お庭の環境に適した樹木・植物を選んでいくと、病気の誘因を減らすことになり、綺麗なお庭、病気になりにくいお庭になるかと思います。
また、病気にかかるには、樹木自身が持つ病気にかかりやすい性質があります。樹木の種、あるいは品種等によって病気の程度は大きく異なることがあります。これは素因と呼ばれ、環境が関係する場合もありますが、主体は遺伝的要因です。
樹木医・中村