こんにちは。樹木医の中村結季です。

人にはお医者さん、動物たちには獣医さん、そして樹木には樹木医というわけです。
喋らない動かない樹木をどうやって診るのかというと、「観る」のです。
具合の悪い樹木がいて、彼らはどうしてほしいのかをヒトに伝えられない。
樹木たちの「こうしてほしい」を探し出し、ヒトに伝えるのが私たちの仕事です。

お医者さんとしての感覚はもちろんですが、私が普段感じていることは「疑問を解く」面白味です。
目の前に「結果」があり、まわりや足下に無数の「要因」がある。
あらゆる要因のうち何が結びついて結果が起きたのか。
点と点を結ぶ面白さが、樹木調査にはあります。
相手が喋れないからこそ、それは大切です。

現場では「さて、君はどうしてそうなったのかな？」と幹に触れ、樹木の立つ場所に並び、そこから何が見えるのか何を普段感じているのか、そこに立つ樹木と同じ風を受けてものを考えます。
ちょっとした探偵気分です(^^)

もちろん、危機に瀕した樹木たちには「そんな悠長なことを！」と怒られてしまうかもしれません。
でも、いきなり来て「科学的にはこうだからこの処置が必要」と言うよりは、まず樹木たちに寄り添ったヒトになりたいと思うのです。

樹木そして植物たちは、有史以前から私たちヒトの最も身近な隣人のひとつです。
お家に植物の無い方も、一歩外へ出れば、木陰を作ってくれる街路樹や彩りをくれる公園の花々を目にされると思います。

古い木造建築、寺院などに心惹かれることもあるでしょう。
それだけではなく、私たちが普段口にする穀物や野菜・果物も、植物です。服だって、麻や綿のものは植物ですね。
植物たちは古くからの友人であると同時に、私たちの衣食住を支えてくれている存在です。
そんな彼らとこれからも共に生きていくために、私はヒトと植物たちとの架け橋になりたいと思います。